藤田嗣治 エッチング(銅版画) 猫(アラシェル) 1929年 「A Book of Cats」より。1929年 用紙(Japanese vellum)32.4×25.1cm 銅版26×20cm
藤田嗣治 エッチング(銅版画) 猫(アラシェル)「A Book of Cats」より。1929年 用紙(Japanese vellum)32.4×25.1cm 銅版26×20cm
これは1930年にアメリカで出版された猫本の名作’M.Joseph"A Book of Cats”に掲載された作品の一つです。この本は1929年に藤田がフランスで描いた猫の絵20種を全頁大の挿絵用に銅版におこしてアルシュ紙(Arches paper)に手刷りした豪華な限定本(500部)で付録に和製ベラム紙(Japanese vellum)に刷った20枚セットが付いています。この本は世界中の猫好きがほしがるために価格が高騰し3年前の米国オークションでは実に800万円以上($ 77,500 )に達しています。20種の猫の絵は時々、一枚または数枚セットで市場に出ますが、模造品もあるので購入には下記の確認が必要です。
まず肝心なのは画面に四角い銅版の押し型(プレートマーク)が付いていることです(画像の6番目と7番目参照)。猫の絵20種は本文と別刷りで用紙の質が違いますが、どちらもエッチングですからよく見ると必ず絵を囲んだ押し型があります。これを見落としてコロタイプ印刷と説明した例を時々見ますが、ビュイッソンの2巻30.127「Book of Cats」の解説にも”imprimes a la main"(手刷り)と明記されています。
さらに用紙の右下隅または左下隅に「MADE IN FRANCE」と小さく印字されています(6番目の画像参照)これは本書のエッチング20種がフランスで製作されたことを示したものです。
また用紙がアルシュ紙(Arches paper)か和製ベラム紙(Japanese vellum)であることです。アルシュ紙のほうは表面がざらざらして色は白っぽく厚さは普通であり、和製ベラム紙のほうは表面がつるつるして色は淡い茶褐色で一見すると全体的にやけたような印象を与えますがこれが本来の色調であり、厚さは普通より薄手です。 なお和製ベラム紙(Japanese vellum)は明治時代には厚手の高級和紙を意味しましたがのちには薄手のものを指すようになりました。ですからビュイッソンの解説では”papier Japon fin"(薄い和紙)と換言されています。
コンディション:画面には汚れ、しみ、傷みなどがなく版画はきれいな状態です。裏面には直径3ミリほどの小さな茶シミが一つありますが他によごれはありません。細かいことですが猫の背から尾の上部にわずかな白い筋が見えますがこれは手すき紙の繊維の筋であり傷ではありません。これは裏から紙を透かすと繊維のむらが見えてよく分かります(最後の画像参照)
販売価格: 325,000円(税込)